立花月夜の思考図書館

・言葉にならなかった思考の欠片を、月夜の棚にそっと置いていく。

金は最高値なのに、なぜ世界中の投資家は買い続けるのか

 金価格が過去最高値を更新する中、「今から買うのは高すぎるのでは?」と感じる人は少なくありません。それでも世界中の投資家や中央銀行は金を買い続けています。本記事では、インフレや通貨への信認、地政学リスク、投資家心理といった視点から、最高値でもゴールドが選ばれる理由を考察します。

連日のようにニュースを賑わせる金(ゴールド)の最高値更新。

 8月13日の市場でも、中東情勢の緊迫やインフレ懸念を背景に、金価格は1オンス=4,400ドル台へと反発した。

 チャートを見るたびに、私はこう思ってしまう。

「ここまで上がったものを、今から買うのは怖くないのだろうか。」

 投資の基本は「安く買って高く売る」。

 その基本だけを考えれば、今の金は誰が見ても高値圏に映る。暴落を恐れて様子見を選ぶ人がいても、不思議ではない。

 それでも世界中の投資家や中央銀行は金を買い続けている。

なぜなのだろうか。

金が買われる理由は「金が好きだから」ではない

金価格を押し上げている理由としてよく挙げられるのは、

  • インフレへの警戒
  • 中東や各地の地政学リスク
  • 中央銀行による金準備の積み増し
  • ドルや主要通貨への信認低下
  • 実質金利や為替環境の変化

といった要因だ。

つまり、多くの参加者は「金がこれからさらに値上がりする」とだけ考えているわけではない。

むしろ、

「現金だけを持ち続けるリスク」

を意識している人が増えているように見える。

「金の高騰」よりも「通貨の目減り」を恐れている

銀行口座の残高は増減しているように見えても、インフレが続けば実質的な購買力は下がっていく。

法定通貨は国家の信用によって価値を保っている。

その信用が揺らぐ局面では、「価値を保存できる資産」として金に資金が向かいやすくなる。

この意味では、金を買う行為は積極的な投資というより、「通貨リスクへの保険」と捉えることもできる。

なぜ利息も配当もない資産が選ばれるのか

金には株式のような配当も、債券のような利息もない。

それでも長い歴史の中で、通貨制度が変わり、国家が興亡を繰り返しても、価値の保存手段として利用され続けてきた。

もちろん、金価格も大きく下落する局面はある。

「安全資産」と呼ばれる一方で、価格変動がないわけではない。

それでも、株式や通貨とは異なる値動きを期待して保有する人は少なくない。

もう一つの要因──FOMO

一方で、心理的な要因も無視できない。

価格が上昇し続ける市場では、

「買わないことで取り残されるのではないか。」

というFOMO(Fear of Missing Out)が生まれる。

本来なら高値を警戒していた人まで市場へ参加し始めることで、上昇がさらに加速する場面もある。

相場では珍しい話ではない。

私はまだ買えない

それでも私は、今の水準で飛び乗る勇気はない。

高値圏である以上、いつ大きな調整が起きても不思議ではないと思っている。

もちろん、その判断が正しいとは限らない。

ここからさらに上昇する可能性も十分ある。

だからこそ、今の金価格を見て感じる「怖さ」は、相場観というよりリスク管理の感覚に近い。

おわりに

4,400ドルという価格は、単に金の価値だけを表している数字ではない。

そこには、

「インフレへの警戒」
「地政学リスク」
「通貨への信認」
「中央銀行の資産配分」
「投資家心理」

といった、さまざまな要素が折り重なっている。

だから私は、今の金相場を「強気相場」とだけ見ることはできない。

むしろ、世界中の人々が抱えている不安が価格という形で映し出された結果なのではないか。

そう考えると、最高値を更新し続ける金相場は、現代社会の安心と不安のバロメーターのようにも見えてくる。